--仲間から学び、これからの学びをみんなで考える--
レポート| 発起人/事務局 簑田理香
4月26日(土)に、鹿沼市の一本杉農園カフェ「蒔時/まきどき」で集った「2018春のツドイ」のご報告、後編です。
「ジェンダー」をテーマにしたテーブルホストの惣田紗希さん、「働く」の松永レミさんのレポートに続いて、後編では「食べる」をテーマにしたテーブルホストの廣瀬俊介さん、「経済」の小山博子さん、「政治」の森良さんからのレポートを紹介します。
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「食べる」担当:廣瀬俊介さん
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1. はじまりのツドイより
3月24日に開いたはじまりのツドイの後半、小グループに分かれて未来に対し不安に思うことについて話し合ったなかで、今回のツドイの話題の一つ「食べる」を選んだもとになった課題を書き出します。
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食と人間 / 日本の食べ物をめぐる問題、食を守る方法 / 自分たちで作れるものは自分たちで作る (食物など) / 農業 / 種子法
2. 春のツドイで。「便利」の問題視から
話し合いは、「安心して食べられること」が大事という意見から始まりました。添加物、放射性物質などが不安というのがその理由です。調べれば、「生産者が見える場所・機会はある」とわかる。でも、それがなぜ必要かわからないとか調べ方がわからない人も多いようだという意見も出されました。また、添加物については勉強すれば危険を避けられるが、農薬のことはよくわからない。だから、農業と農薬から知りたいという意見もありました。
食の安心を気にする必要が今わからない人については、生きることに忙しく目の前の一番大変な問題を乗り越えるほかになにか考える余裕がないのかもしれない。それは、核家族化や公衆向けの情報の流され方まで、個人というより社会構造の問題があってのことかもしれない。そして、この問題を考えるときに人々に、余裕がなく「便利」なものに流されてしまいがちな点に的をしぼって見ることは有効かもしれないという意見の一致を見ました。余裕がないほかに、自分たちの親の世代がすでにぬか床のつくり方をその親から教わっていないなどの流れが伝わってきていると。その上に、便利さの追求から食べ物に保存料が添加され、環境に害のある包装材が普及するなどしてきました。
これらのことの確認から、まずは自分たちが「便利」と「食べる」を結びつけて、そこに健康や環境や経済などの問題をからめて話し合うツドイを開くのがよいという意見がまとまりました。それから、「便利」にともなう問題の解決に向かう際は、福田さんの発表にあった「対立をつくらない」ことと、宇賀神さんの発表にあった「学びたいときが一番学べるとき」を大切にして種まきのように情報を発信し話し合いの機会をつくることを大切にしようと確認し合いました。
食の安心を気にする必要が今わからない人に、なぜそれが必要か伝えるためには、参加者の一人、森良さんが紹介されたファシリテーションにおける質問する力が大切だと思う、それについてじっくり聞きたいという意見もありました。福田さんや宇賀神さんの発表にあった身の回りのことから自分のしていることまでに疑問が持てる感性、感覚、力も重要だと。今ここにいる自分たちは考えが近いが、考えが遠い人々と向き合い話し合っていくときに、そのように適切に疑問が持て質問ができる力は大事で、これらの方々にあらためてお話を聴きながら意識して身につけていくこともツドイのテーマにならないかと意見がまとまりました。
また、このようなテーマで人と話すことが日常ではなかなかない、だから自分のなかで考えをまとめて終わりにしてしまいがちだが、こうして集まって話し合うことは自分の心を開いて、視野を広げて、考えを深めるきっかけにしながら、まずは集まった人々と情報や思いや考えを共有できることが大切で、そのことはツドイを続ける意義、みなで集まることを楽しむ前提となるということが確認し合われました (第二部から参加した増田晴美さんの意見を組み入れました) 。
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「経済」担当:小山博子
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グループでの意見交換や対話を元に参加者の皆さんの言葉を借りながら、まとめさせていただきました。
・「経済」のことをどう学び直すか。専門家が当たり前のように難しい言葉を並べると、それだけで軽くアレルギー反応を起こして腰が引けてしまいます。でも本当はわかっていたいし、とても気になっています。私たちがこの世界で、現行の経済の仕組みの中でどのように暮らしているのか、その立っている場所、足元がどこに根を下ろしているのか知っていたいと思っています。
「低賃金」「年金制度への不安」「経済的格差」。それらは前回のツドイでお金に関する身近でリアルな問題点として挙げられたものの一部。懸念が多い分、それらの問題についても構造的なものがどのように成っているのかをまずは知る(学ぶ)必要があるでしょう。
・単なるGDPを物差しにした経済成長は地球上に生きるものの存在を無視して煽られていくものに過ぎません。私たちは「お金の使い方」によって公平性を取り戻したいと思っています。奪い合い、摂り合いはしたくないと思っている。未来を思えば、「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の3方よしに、「作り手よし」「未来よし」を加えた5方よしのエシカル※経済に目を向けて、消費行動や経済活動が行われていくように社会全体の空気と実践が広まることを期待してしまいます。しかし実践とは私たちの具体的な行動のことです。廻るものは、お金だけではなくて、未来に向ける願いでもあります。
様々な情報交換で5方よしを創造する想像力を養っていきたいと思いました。
・お金は便利な道具だけれど、力をもちすぎてしまいます。お金を持っているか持っていないかというところで格差が広がるということは、人の心持ちに影響し、自尊心に関わることにもつながってしまいます。
さて、お金を使わない経済の割合を膨らませて、補っていくことは可能だろうか。お金に頼りすぎない生活力を身につけることも、そのための教育も必要であろうと話しました。この先の「ツドイ」で、「生活力」とは?というところも、また触れて話し合える機会があるといいなと感じています。「長期的・持続的な経済への転換」へのヒントにはなるかもしれません。
*エシカル「倫理的な、道徳上の」
*太字 「はじまりのツドイ」で挙げられたキーワード
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「政治と地域」担当:森 良
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3月のはじまりのツドイの話しあいでは、自分と地域と政治にかかわる問題意識がたくさん出された。
今の社会の課題から「介護に国の予算を回す」とか「戦争に進む国策を止める」「日本の農業やTPPについて」など政策をどうつくるかということで考えなければいけないことがたくさんあるのに、「政治に無関心」な人が多く「仕方ないと流されることで承認してしまっている」ことや「大きなものに倣え的風潮」をなんとかしていき「政治と自分の距離を縮める」ことが大事で、「自治的な動きをつくっていくこと」という基本的な方向や「政治家とのお話会」など具体策も少し出ていた。
その紹介を入り口として話しあった結果、3つの学習テーマが浮かび上がってきた。
①地域の歴史から学ぶ
②外交と地方自治
③憲法を身近に
それぞれについて簡単に説明する。
①当日もオランダやフィンランドの教育の紹介があったが、違う国のやり方から学ぶとともに、地域の歴史から学ぶことが必要だということ。「自治的な動き」は栃木にも昔からあり、足尾鉱毒事件における田中正造と農民・住民のたたかいや自由民権運動の展開があった。自由民権運動では、国会開設に向けて全国で100近くの私擬憲法草案(五日市憲法が有名)がつくられ、各地の農民・住民が憲法の案を議論したことが紹介された。小山には、絹村、桑村というのがあって、昭和31年(1956年)に合併して桑絹町となった。昭和35年には、分村を巡る村長選挙で202人が立候補するという事件があった。この当時町村の首長選挙にあっては供託金が不要だったため取られた戦術であった。今の供託金300万円というのはいかに市民の政治への参加を阻害しているかを物語っている。
②日光市議の方の「防災放送でJアラートが流された」という話。この話は、地域自治の話になって「国は外交と防衛をやってればいい」と言ったら、いや地域も外交と関係があるという強力な例としてお話しされた。この方は、このことを「一体市民にどう説明すべきか」と悩まれていた。ぜひ詳しい問題提起を受け、みんなで話しあってみたい。
③赤ちゃんを連れたお母さんの話。「憲法改正」で何がよくなり、何が悪くなるのかとても関心があるが、子育て中のお母さんたちは情報から遠く、自分の関心を話しても反応がないとのこと。これが多くの場合の現実で、そこにどうアプローチして関心を持ってもらい気軽に話しあえるようになるのか、またそのために自分で考える力をつけるにはどうしたらいいのかというテーマ。
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以上が、春のツドイのご報告になります。いかがでしたでしょうか?
このレポートをもとに、ご家庭やご友人たちと、またちょっと感想や意見の交換を続けていただければ幸いです。そしてまた、同じテーブルで話を重ねていけたらいいですね。
次回、夏のツドイのテーマについては、夕食交流会で、おいしい一本杉農園のパンと、パンにあうお惣菜として「わたね」さんが提供くださった旬の野菜料理などをいただきながら、意見交換をしまして、「政治」「憲法」「平和」をキーワードに行うことになりました。政治のテーブルから出された3つの視点<①地域の歴史から学ぶ②外交と地方自治③憲法を身近に>を盛り込めるような企画を、発起人事務局で検討中です。決まり次第、ご案内しますので、ぜひぜひご参加くださいませ。
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