「これからの経済のこと」
~食を支える農業と経済をながめて、モノゴトのめぐる道のりをたどる~
レポート担当 倉本芙美(未来にYES!をつくろうネットワーク発起人、農家、料理人)
10月27日(土)12:00-大日向マルシェが開催される中、那須 OURS DININGさんの
敷地内にて、以下の内容が開催されました。
《第一部》座談の会
・ミニレクチャー:粟谷しのぶ(弁護士、こどもの未来にYES!をつくろうネットワーク発起人)
・経済活動のかたち事例紹介:小野寺幸絵(爽菜農園)榎尚子(地域通貨イーネ!)
・フリーディスカッション
《第二部》ランチ交流会
OURS DININGにて秋の旬ランチを囲みながら
今回のテーマに至る経緯
4月に開催された春のツドイでは、この会の中で、みんなで学びたい内容について話し合いました。「ジェンダー」「食べる」「経済」「政治」などがあがり、今回は、その中の「食」と「経済」をテーマに会が企画されました。
今回の集いのテーマ
経済の、めぐり流れ続けるあり方を、自然のあり方と重ね考えてみよう。
わたしたちの「食べる」を支える農業と経済を通して、これからの経済の在り方を参加者全員で語り合おう。
座談の会にて
まず初めに、ミニレクチャー(論点紹介)を粟谷しのぶさんより(弁護士、子どもの未来にYES!をつくろうネットワーク発起人)お話しいただきました。
以下まとめ。
歴史的変遷歴史的変遷
近代以前の経済:8割以上が農業営む 家族や地域同士で助け合いながら経済を回していた 物物交換など
近代の誕生:家族や地域での助け合いから、より広い人間関係へ
直接民主主義から議会制民主主義、間接民主主義へ 官僚制度が発達
誰かにゆだねて自分たちができることを分業していくというスタイルへ変わる
福祉国家の時代:適正な価格が決まっていく 市場に任せておけば適切な資源分配ができる→無制限な欲望を満たすための生産へ
公的な部分を小さくして私的領域へ任せたほうがいいのでは
低成長時代:公共領域の代表である政府を小さくすることが私的領域の発達を促す、という考えが主流に →規制緩和
政府に任せていた部分を小さくすることにより、経済を回していくほうが発展するのでは。
現代:経済がメインで社会が回る(経済の時代) 経済が家族や共同体を解体。公的領域の縮小が経済成長につながるとの考え
新自由主義:
国家による福祉・公共サービス縮小(民営化) 市場原理主義
グローバル資本主義→新自由主義を世界まで広げたもの
経済学者疑問の声
市場原理主義は間違っていた。 政治を牛耳っている
資本主義は自由の為と信じていた。しかし消費出来ないと自由ではない。
消費するための労働になっていないかどんなに働いても欲望は満たされない。
どんどん所得格差が富裕国で拡大している。という経済学者たちの指摘。
ではどう進んでいったらいいのか→誰も見出していない。
→新しい行動モデル 経済が求められている
「里山資本主義」:今の経済と共存し、環境にも優しい経済のありかたサブシステム再構築
exペレットボイラー
環境経済学:地球生態系のよい一部になるということが重要
環境負荷、コストにしかならないと言われていたが、環境に良い行動モデルは、費用がプラスになるのでは?
経済活動のかたち事例紹介1
市貝町の有機農家、爽菜農園小野寺幸絵さんよりお話しいただきました。
中米コスタリカ20年ほど前、農業支援のために青年海外協力隊で活動していた。
自給自足が成り立っていて、途上国の人々、楽しく暮らしていた。昔の日本の様。
しかし、先進国による、大規模農業が導入された。
現地の人は収入を得られるので働き始めるが、収入が高いわけでもない。全てお金で買わなくならない暮らしになっていった。
大規模農業は、どうしても農薬が必要になり、健康を害していく人々を目の当たりにした。
わたしたちが出来ることは何だろうか。
日本に戻り、自給的な暮らしと有機農業をスタートした。
日本人が自分の農地を耕し、生産消費をすること。藁や竹を使って、身の回りにあるもの大事に使いながら、出来ることは自給している。少し余分になったお金で正規の値段でコーヒーやバナナを買う。
まずは、地域の人困っている人がいたら、小さいことの手助けをしている。
それが遠い地域や国に届くのではと思っている。
経済の事例紹介2
地域通貨イーネ!のおはなしを、榎尚子さんより伺いました。
黒磯にて、地域通貨学びの会を定期的に行っている。
同じ地域の人たちと一緒に楽しく安心して暮らしたい、という人々が集い始まった。
ゆるく20人ほどが関わって、10年ほど続いている。
地域通貨から見えてくる平和なお金の使いから
通帳をつくり、用いている。イーネという単位で、話し合いながら合意して金額をやり取りしている。
ひとりの生活者として、「確認」したいということが芯になっている。
人は一人では生きていけない。生かされている存在。確認してわかりたい。認識できていたらすべての問題は解決しているのではないか。
気楽と言われてしまうが、理想を掲げなければ始まらない。
奪わない、貢献したい、贈与経済、循環
経済とは本当にやっかい、自分一人で生きていけてしまう。生かされているという実感が切られている。
以降、フリーディスカッションの時間を設け、登壇者への質問や感想、参加者からの日々課題として考えていることなどのお話などがあがり、沢山の方が手を挙げてくださり、おおいに盛り上がりました。
安全保障について、農水省は補助金について、有機農家さんの実体験を踏まえての考察、フランス在住の方からみたオーガニックの現状等があがりました。
第二部ランチ交流会
OURS DINING秋の旬ランチを頂きながら、交流会を行いました。
OURS DININGさんのお料理には、マルシェに参加されていらっしゃるすべての農家さんのお野菜を使ってくださりました。お料理のご紹介を一つ一つしてくださったのですが、お料理それぞれに、農家さんのご説明もあり、大日向マルシェで大事にされている一つの、《小さな豊かな経済》がそこで回っているのだなぁと感じさせられました。
OURS DINING ツドイメニューの紹介
お一人ずつ自己紹介と本日の感想や今回のテーマについてのそれぞれのお考えを話してくださいました。県内は佐野から、また県外からは兵庫から、そして海をまたいでフランスから。沢山の方々が遠路はるばるいらっしゃいました。今回のテーマについて、ご自身の考えがある方や、知識を深めたい、という方が多くいらっしゃり、そのの熱意を感じさせられました。
感じたこと
今回参加してくださった皆さんのお話や、その表情がとても生き生きしていらしたことが印象としてありました。粟谷さんの論点紹介にて現在の農、経済についての課題を理解し把握することが出来ましたが、その課題に対して、もう既に始めていらっしゃるからなのだろう感じました。
また、今回の開催場所である、OURS DININGさん、大日向マルシェはすでに取り組みを進めている先進的な集合体なのだろうと感じさせられました。私自身、今回大日向マルシェに参加したのは二回目でした。今でこそたくさんのマルシェが各地で行われていますが、常に何かが生まれている、成長幅のあるマルシェなのではないだろうか、と。大日向はただのお金のやり取りだけではない、そこには対話があり、工夫や実践があり、学びがある。(エコロジカルな包装や、社会課題と生活が自然と結びつき、背伸びのないディスカッションの、まあるいテーブル、それぞれが持ち帰って自分で料理して欲しいとの食事はスープまでの販売)小さな種が苗になり、作り上げている提供側と、お客さん、OURSさんが一緒にそれを温めて見守っているような。そんな印象を受けました。
また、榎さんの「確認」したい、ということが軸になっているというお話が印象的でした。確かに、例えば、野菜だったらその野菜はどのような場所で、土で、どのような人が作っているか。どんな料理が美味しいか、どんな味がするのか、それを食べて自分はどう感じてどんな気持ちになるか、などといった、確認作業は、時間や手間はかかるけれども、生かされているという実感や、納得を伴うことが出来、それが持続的なものになっていくのだろうと感じました。
レポートをまとめて
課題は多くある中で、それに対しての自身の考察を持つことと、それに合わせてそれぞれの生活や生業の中で、地と周りの人々との繋がり合いとの確認作業を続けることが、解決の糸口になっていくのだろうという考えに至りました。
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